
端的に言えば日本版 Soylent。と言っても米国のSoylentと直接の関係はありません。COMPは、それを飲むだけで人間に必要なすべての栄養がまかなえる、という意味では Soylent と同じコンセプトを持っていますが、薬学を専門とする研究者だった鈴木優太さんが独自に開発した日本発の完全栄養飲料。開発に夢中になって会社を辞め、COMPを開発製造するスタートアップ企業を立ち上げてしまったそうです。現在 COMP はクラウドファンディングサービスの kibidango でプレオーダーを募集していて、2月中の出荷予定なのだとか。
以前、Soylent人柱企画をやった前科のある geared としてはこれは気になります。編集部でもぜひオーダーして試してみたい!と思っていたのですが、COMP の中の人が最新のサンプルを飲ませてくれるというので、COMP のオフィスに行って飲んできました。
Soylent 1.5と旧バージョンの COMP、そして最新サンプルを飲み比べてみたのですが。。なるほど。
COMP は Soylent に比べると飲みやすいのではないかと思います。Soylent はほのかに糠(ぬか)っぽい独特の香りがしますが(嫌な匂いというわけでもない)、最新の COMP はあまり匂いがありません。
また、舌触りは、Soylent がザラザラしているのに対して、COMP はさらっとしています。編集子の個人的な好みもありますが、COMP は味や舌触りが牛乳に似ていて、その点では知っている飲み物に近いという安心感があるかもしれません。
ちなみに、旧バージョンの COMP は、粉を溶かしたあとオイルを混ぜる仕様で、こちらの味は微妙にオイルっぽさ(匂いの弱いオリーブオイルのような感じ?)がありました。
含まれている栄養価も Soylent と COMP では少し違うようです。COMP は日本人向けに作られていて、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015)」に準拠しているとのこと。1袋(1日分)のエネルギーは Soylent が2000kcalなのに対し、COMP は2300kcalになっています。米国の方がエネルギーが少ないのが面白いですが、それぞれ準拠している基準が違うからでしょう。

さらっとしているので、スポーツ用のドリンクボトルでも飲めるとメーカー談。
とはいえ、COMP のほうが Soylent よりも優れているとここで評したいのではありません。仮に COMP の方がすこし不味かったとしても、COMP の登場はグッドニュースだと編集子は考えます。
なんといっても Soylent はまだ日本では買えませんから、ふつうに日本で買える(予定の)完全栄養飲料であり、1食あたりの価格はプレオーダー時点で490~560円(税込)、しかも比較的飲みやすいという COMP はそれだけでも価値があります(もちろん、COMP だけではなく別の優れた完全栄養飲料が出てくる可能性もあるでしょう)。この新しい「食文化」の日本上陸自体を編集子としては歓迎したいのです。
Soylent が出てきたときに、ギークを中心に熱烈な支持があった一方で、これまで人々が培ってきた食文化を否定するものだという反応もあったそうです。Soylent のチームにそんな意図があったとは思えませんが、食事の準備や食べる時間の削減といった効用が謳われたことで効率最優先というイメージが生まれ、通常の食事を Soylent に置き換えれば食糧問題や食料生産に伴う環境破壊を解決できるという社会的なメッセージが、Soylent に急進的で極端に未来的なイメージを与えてしまったのでしょう。
しかし、Soylent にしても COMP にしても、それを取り入れたからといって美味しい食事ができなくなるということにはなりません。それよりむしろ、惰性で食べている美味しくも安くもない外食をやめて COMP にすれば、その分、週に1回、そこそこちゃんとした食事を気の利いたお店で食べることができるかもしれないのです。
休日、3度の食事をいちいち手当てしていたら、何もしないうちに土日が終わってしまいます。朝昼は Soylent にしておいて、パートナーと2人で午後いっぱい使って手の込んだグリル料理に取り組んでもいいはずです。

COMPは他の食べ物とミックスして飲むことを積極的に推奨している。
COMP のチームは、食に対してポジティブであることを表明する意味からでしょう、積極的に他の食べ物との組み合わせも受け入れているようです。COMP をなにかと混ぜて飲んでみようというわけです。編集子も何種類か飲ませてもらいましたが、アイスコーヒー飲料とのミックスは想像通りカフェラテ風で美味しく飲めました。オレンジジュースと混ぜると昔のヤクルト・ジョア風でした。また、(熱で破壊される栄養素があることを承知できれば)料理に入れてもいいと彼らは言っています。
geared 的には、やはりアクティビティに COMP を持ち込んでみたいです。以前、Soylent人柱 の記事で編集部 T も触れていましたが、水さえあれば、たとえば長期縦走の食料としても有効なのではないでしょうか。この場合でも注意したいのは、すべての食事が COMP だとイメージしないことではないかと思います。COMP をベースに置いてあれば、いろんなオプションの食べ物も楽しみながら、安心してフィールドで連泊できるように思われます。
食にコントロールされるのではなく、食をコントロールする世の中がやって来ようとしているのかもしれません。