
2016年に注目すべき軽量テントのトレンドを、2週にわけてご紹介いたします。前編となる今週は、使い勝手や細部にこだわった非自立型テントに注目してみましょう。
格段に立てやすい五角形モノポールシェルター
NEMO の APOLLO 3P BIKEPACKING TENT は、モノポール式のペンタゴナル(五角形)ピラミッド型のテントです。名前のとおり3人までを収容でき、なおかつバイクパッキングやパックラフトのような、歩く旅に乗り物を組み合わせたアメリカで近年浸透しつつあるアクティヴィティにも対応しています。特殊な五角形のフォルムで最大3人寝られるサイズ感なら、1人+自転車や、1人+船で宿泊しても、十分に居住スペースが確保できることは言うまでもありません。
※編集部注: 本稿は土屋智哉さんの談話をもとに、編集部が文章化しています。
アポロ3Pの本体重量は545g、サイズは長辺270cm・短辺250cm・高さ150cmぐらいです。 比較すべきモノポールシェルターとしては、今や海外ユーザーからの注目も高まっている LOCUS GEAR の製品が的確でしょう。同ブランドの二人用四角型モノポール・シェルターの Hapi Silは重量480g、長辺270cm・幅180cm・高さ130cmです。これと比べるとアポロ3Pは軽さの面では劣るものの、現行の人気モデルにも拮抗できるスペックだということがわかります。
形状としてはただの五角形ではなく、四角形の居住スペースに三角形の前室を組み合わせたような構造になっている点が重要です。ペンタゴナル型は設営が難しそうなイメージがあるかもしれませんが、頂点の位置は四角形側に少しオフセットしているので、四角フロアのモノポールシェルターのように4点を決めればしっかりと設営できるのです。
さらに設営を容易にするため、シェルター内にはテンショニングラインが付属しています。このラインを指定の場所にしっかりと結びつけて長辺の2点を決め、ラインがピンと張るようにペグを打てば、きれいに四角形をつくれます。この一工夫だけで、一人で設営するときにも角度がチェックしやすく、ペンタゴナルでも容易な設営を可能にしています。
長方形のシェルターを立ててから、最後に一点を引っ張りだして三角形をつくり、前室をしつらえれば設営は完了。最後の一点はテントを支えておらず、ここだけペグを外しても自立するユニークな形状です。
個人的には、これは2014年から日本でも開催されるようになったOMMレースにも適したシェルターだと思っています。OMMレースのレギュレーションではタープの使用が禁止されていて、床のあるなしを問わずフルクローズドになる二人用のシェルターが必要です。これなら十分なスペースが確保できますから、雨天で装備が濡れてしまった場合でも汚れ物の退避スペースを作れたりできそうです。
マイナーチェンジで居住性を向上させた定番ツエルト
今年の finetrack の商品のなかではカミナドームに注目が集まっていますが、個人的に最もおもしろいと思っているのはツエルト2ロングです。カタログ上ではそれほど大きく取り上げられていないのですが、今シーズンから非常に興味深いマイナーチェンジが施されています。

旧ツエルト2ロングのベンチレーター。入り口のジップの上部に設けられている。
今までのツエルト2ロングではベンチレーターが出入口の上部についていましたが、今シーズンからそれがサイドの角に移設されました。これによって、出入口のジッパーをフルに開けるようになり、床を開いてタープのように利用したときの使い勝手が向上しています。メーカー側は、こうしたタープ使用時の利便性をリニューアルの目玉にしています。

新ツエルト2ロングのベンチレーター。
しかし、実際に設営してみて個人的に驚いたのは、出入りのしやすさが格段に高まったことでした。たった15cmほど高く入口ジッパーが開くようになっただけですが、たとえばテントの天井の高さが15cm高くなれば居住性が格段に上がりますよね。それと同様に、2016年モデルでは出入りのストレスが15cmの差によってかなり軽減されています。ツエルトの軽さに魅力を感じてはいたものの、出入りのしにくさがネックになって二の足を踏んでいた人も少なくないでしょうから、この変化には十分すぎるほどの意義がある。より積極的に使用できるシェルターとして新たに生まれ変わったといえるでしょう。
そもそもツエルト2ロングは、「通常のツエルト2から長辺を20cm長くすれば居住性が向上するはずだ」と Hiker’s Depot から finetrack に提案して、2012年にオリジナルの別注品として生まれたものでした。翌年からは finetrack の通常ラインナップに加わったのですが、 finetrack に提案した時点で、わたしたちは全長を長くするぐらいのアイディアしか採用できなかったのです。他のアイディアはツェルトをツェルトでなくしてしまうようなものばかりでしたし、それほどツエルトのデザインは完成されたものだと思っていたんです。
だからこそ、ベンチレーターをサイドに移設するだけで使い勝手が大きく向上したことには驚きました。複雑なギミックではなく、たったひとつのシンプルな変更で、大きな変化を起こしている。これによって、オンリーワンなジャパニーズULシェルターとしてのツエルトのポジションが、より盤石になったのではないでしょうか。こうした変革を目にすると、メーカーのモノづくりは奥が深いと改めて思い知らされます。それほど個人的には響いたマイナーチェンジです。
しかし、これが完璧かと言われればそうでないのもまた面白いところ。ベンチレーターの開口部が従来より大きくなり、真下ではなく横に開くようになったので、ここから風雨が吹き込む可能性が否めません。もちろん十分なテストが重ねられているでしょうが、構造的には非常に気になるポイントです。自分自身も様々な状況で今年使用してみて改めてレビューしたいと思います。なお、メーカーでは旧ツエルト2ロングもまだ多少は在庫を持っているそうなので、実績と耐候性を重視して従来型のモデルを買うこともできます。ご安心ください。
APOLLOはガイドラインをつけただけ。ツエルト2ロングはベンチレーターを移設しただけ。どちらもカタログを眺めているだけでは見逃してしまうかもしれないような繊細なポイントですが、実はそこにすごく大きな意味があるのです。
- 製品名1
- APOLLO 3P BIKEPACKING TENT
- ブランド1
- NEMO
- 価格1
- ¥33,500(税別)
- 重量1
- 545g(本体)+280g(ポール)
- 問い合わせ1
- イワタニ・プリムス
- 製品名2
- ツエルト2ロング
- ブランド2
- finetrack
- 価格2
- ¥23,760(税込)
- 重量2
- 340g
- 問い合わせ2
- finetrack
- 購入
- Hiker’s Depot ほか