Quantcast
Channel: geared【ギアード】geared【ギアード】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 904

いまこそ焚火台が熱い! UL的小型ネイチャーストーブの現代史

$
0
0
いまこそ焚火台が熱い! UL的小型ネイチャーストーブの現代史
_DSC4375

冬も本番を迎えました。調理器具として、また暖房器具として、ネイチャーストーブの購入を検討している方も多いでしょう。

しかし、日本では国立公園内での焚火が禁じられているので、ネイチャーストーブが使えるところは限られます。沢沿い、川沿いなどは慣習的にグレーゾーンとみなされることも多いですが、山の上での使用は現実的に厳しいでしょう。そのせいか、道具としては昔からあるにも関わらず、ネイチャーストーブは日本においてそれほど一般的ではありません。

※編集部注: 本稿は土屋智哉さんの談話をもとに、編集部が文章化しています。

一方、海外のULハイカーのあいだでは、ハンディサイズのネイチャーストーブが支持を得てきました。ULのパイオニアであるレイ・ジャーディンは、夏の北極圏のような極地のオフトレイルをハイキングしています。そうした条件下では燃料を現地で調達できるネイチャーストーブが有効であり、積極的に使われています。同じオフトレイルを旅する人でもシーカヤックをする人なら、チマチマした道具は使わずに盛大に流木を使ってゴーン!と火を焚くでしょうね(笑)。
 

二次燃焼系ストーブの盛衰

最初にULハイカーのあいだで注目を集めたのは、カナダのメーカーである BUSHBUDDY のストーブです。このモデルは、二次燃焼方式と呼ばれるシステムが脚光を浴びるきっかけになった名品といえるでしょう。熱された木から出るガスに火をつける焚火の原理を効率よく利用するため、蒸し焼きにした枝から出るガスの通り道をつくり、集中的に着火できる構造を持っています。うまく燃えれば中には灰しか残らず、燃料のロスも少ない。本体は小さいし、燃焼効率もいいということで多くのハイカーが飛びつき、BUSHBUDDY 以降は他のメーカーも同じ仕組の二次燃焼系のストーブをつくっています。

しかし、現実はそんなにうまくはいきません。二次燃焼系ストーブは、乾いた枝さえあれば使いやすいものの、いつもコンディションのいい燃料が手に入ると限りません。また、あくまで自分が体験した範囲での話ですが、容量が小さくなるほど二次燃焼が起きにくいと感じました。さらに容量が小さいと、枝を折って入れる手間がかかるし、使用時に焚き木を足して火加減を調整することもできません。クッカーに入れられるサイズであっても、ススがたくさんつくので使用後にクッカー内に収納するのはちょっとためらわれる。

それに、国内で焚火が黙認される場所となると、海岸や川辺のような水が近くにあるところですから、そんなシチュエーションで小さいストーブの中にポキポキ枝を折って入れるのはなかなか酔狂なことでしょう。道具としてはすごくおもしろいし、二次燃焼系ストーブできれいに燃えたときの感動はひとしおなのですが、結局のところ日本では法的環境の問題もあり、実用品というよりも嗜好品としてのストーブという立場にとどまっているように思います。
 

湾曲台系ストーブの登場

台をカーブさせた先駆的モデルの Picogrill 398

台をカーブさせた先駆的モデルの Picogrill 398

それでもやはり「焚火の道具がほしい!」というニーズは強かった。それに応えて新たな潮流を巻き起こしたのが、geared でも以前ご紹介した Picogrill です。これは台を地面から離して湿気を遠ざける、昔ながらの焚火台の系譜に連なるものでしょう。しかし、従来の焚火台の多くがフラットな構造だったのに対し、Picogrill は燃料を受ける部分を湾曲させて焚き木の方向を一定に揃えやすくしている。これが最大のポイントです。

Picogrill が出た当初はそのコンパクトさにも注目が集まったのですが、実は重量は442gと、すごく軽いわけではない。同じような重さの焚火台だと、いちばんシンプルに運べるのは、ずっと前からあるユニフレームのファイアスタンドIIです。足を畳めばまっすぐになって携行しやすく、重量も490gと Picogrill と同クラスでした。なので、Picogrill の革新性は重量や運びやすさよりも、やはりその形状にあると考えたいところです。

トップ掲載の RSR Naturestove 使用例。燃料の方向に注目。フレームを固定するヘアピンもチャーミングです。

トップ掲載の RSR Naturestove 使用例。燃料の方向に注目。フレームを固定するヘアピンもチャーミングです。

台を湾曲させる構造は、川下りで旅をする人に親しまれてきた、親木を川が流れる方向と平行に組んで五徳と反射板がわりにする焚火の方法と似ています。大きめの親木のあいだに、中くらいの木を並べて火床ができるようにして、その上に細かい枝を入れて着火させる。川と平行に組んでおけば、流れに沿って吹く風が親木のあいだを抜けるので、自然と燃えやすくなるわけです。Picogrill のような湾曲台系のストーブは、風向きを考えて設置すれば、その力を最大限に引き出すことができます。

SOLA TITANIUM GEAR の Super Naturestove は垂直に組まれる五徳が特徴的。

SOLA TITANIUM GEAR の Super Naturestove は垂直に組まれる五徳が特徴的。

実際に、最近では燃料を受ける部分をカーブさせた新しいネイチャーストーブが続々と登場しています。日本でつくられたものだと、高い工作精度を誇る RiverSideRambler の RSR Naturestove や、トレイルランナー fuusora さんのプライベートブランド SOLA TITANIUM GEAR から出ている Super Naturestove がありますが、両者ともやはり台を湾曲させる構造をもっています。同じアイディアを共有しつつ、そのなかで細部が微妙に異なるものが出てきている状況だといえるでしょう。Picogrill のさらに小型化な後継モデル Picogrill 85 も、やはり焚き木を受ける部分が湾曲しています。

 Picogrill85。外観こそ389と大きく異なるものの、風防内の燃料台がカーブした構造は共通している。サイドの穴からは燃料を追加できる。

Picogrill85。外観こそ398と大きく異なるものの、風防内の燃料台がカーブした構造は共通している。サイドの穴からは燃料を追加できる。

この流れは、BUSHBUDDY のストーブが流行した頃に、同じ二次燃焼式の構造を利用したモデルがたくさんつくられた頃を想起させます。ひょっとしたら、湾曲台系ストーブのなかでも、今後いろんな試行錯誤が繰り返されて、さらなるブレイクスルーが起きることも期待できるでしょう。こうした目線で小型のネイチャーストーブを見ると、もしかしたらネイチャーストーブのネクストジェネレーションが見つかるかもしれません。

製品名1
RSR Naturestove
ブランド1
RiverSideRambler
価格1
¥17,280(税別)
購入1
Hiker’s Depot ほか
製品名2
Super Naturestove
ブランド2
SOLA TITANIUM GEAR
価格2
¥12,800(税別)
製品名3
Picogrill 85
ブランド3
STC
参考価格3
59スイスフラン

Viewing all articles
Browse latest Browse all 904

Latest Images

Trending Articles