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絶妙なサイズとディティールを極めたニュースタンダード。FREELIGHT × Highland Designs Swing Tarp

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絶妙なサイズとディティールを極めたニュースタンダード。FREELIGHT × Highland Designs Swing Tarp
SWING TARP

もともとは、FREELIGHTさんとうち [*1] でそれぞれタープを作ろうっていう話があったんですね。うちの方では、一昨年に僕が自作したタープがあって、それをベースに商品にしたいと考えていました。それで、アメリカで作ってもらおうとしたんですが、なかなかいいクオリティが出ない。

*1: Highland Designs。Hiker’s Depotオリジナル製品のブランド。

一方、FREELIGHTさんはタープをベースにして組み合わせるシェルターの構想があったんですが、ロットの問題もあってなかなか作れる工場に出会えなかった。そんな時に、じゃあ一緒に作らない?っていう話になったんです。

※編集部注: 本稿は土屋智哉さんの談話をもとに、編集部が文章化しています。

タープにとって理想的なサイズは?

僕が最初に考えていたタープは、220×270cmのサイズなんですが、Swing Tarpはそれよりもちょっと大きい(260×276cm)くらいのサイズです。サイズだけ聞くと大きいように思えるかもしれませんが、実際に張ってみると、ツエルトIIロング [*2] の大きさと変わらないんですよ。

*2: finetrackのツエルトIIをHiker’s Depotのアイディアでアレンジした超軽量のシェルター。2013年からはFinetrack正規ラインナップとして販売されている。

アメリカにポンチョタープっていう道具がありますよね。5フィート8フィートとも呼ばれていて、150×240cmのソロ用のタープです。米軍でも採用されていますが、これは標準サイズではなくて、最低限のミニマムサイズですね。
150×240cmでも大きいと思うかもしれませんが、それは二次元で考えるからで、三次元にすると有効面積はかなり小さくなるんですよ。

このポンチョタープのサイズでも寝るスペースは作れますが、風をきちんとよけられるように張ると天井高が出せない。中で座れるか座れないかぎりぎりです。座れるぐらい高く上げてしまうと、寝袋が全部埋まらないとか、足を延ばして寝れないということになります。また、雨風が強いと中に入り込むので、一泊だけ山の中で寝るならミニマムでもいいけれど、何泊かするときは雨風の対処に慣れているか、あきらめの境地に入らないと難しい。
小さいタープがダメということではなくて、それだとタープって不快だと思う人が多いように思うんです。タープだと雨に濡れちゃうんだなと思ってしまったり。

そういう事情もあり、アメリカでは一般的にタープキャンピングをする人のサイズは8×10フィート(240×300cm)です。ポンチョタープの約2倍です。レイウェイ・タープが使っているサイズもそこに近いですし、日本のアライテントが出しているビバークタープMもそれに近いサイズで、服部文祥さんはそれを少し延長したバージョンを使っています。沢登りでもこれが標準的なサイズになります。タープで複数日のキャンプで、天候の変化が予想されるときは、それぐらいのスペースがないとダメとまではいわないけど、必要なサイズではないかなと思います。

バンジーコードが張り方のバリエーションを拡大

Swing Tarpのサイズ(260×276cm)は、この240×300cmと面積としてはほぼ同じです。つまり、複数日、山に行くときに、ある程度外的要因を回避できるサイズです。これなら、タープを小屋掛けで張ったときに、ツェルト+前室ぐらいのサイズになって、安心感をもって寝ることができる。

庇を作っても、居住性が確保できる。


また、このサイズだと(頂上の辺(棟)の)内側に1本ポールをいれれば、ひさしも作れるし、張り方のバリエーションがたくさんできるというメリットがある。ミニマムなタープでこれをやると、寝るためのスペースがなくなってしまうんです。スクエアタープのよさである張り方のバリエーションの多さを活かすなら、最低限これぐらいのスペースが必要になってきます。

※編集部注: Hiker’s DepotのWebサイトに、Swing Tarpの張り方のバリエーションがたくさん紹介されています。

さらにSwing Tarpでは、張り方のバリエーションを増やすために、辺縁部にバンジーコードを入れることができるようになっています。ひさしを作るような工夫した張り方をするときや、そのままでは開口してしまう部分を閉じて壁にするために、タープの余った部分をギュッと縮めて形作ってしまう。
これができると、とても使いやすくなります。このシステムはExpedのScout Tarpという製品に採用されているのと同様です。

ワンポールでピラミッド型に張る。辺縁部のバンジーコードが働いている。


このシステムによって、中心部にワンポールを立てて、周りのバンジーコードを絞ることでピラピッドタープにすることもできます。生地にシルナイロンを採用しているので、テンションがかけやすいことも一役買っています。

表側12ヵ所、内側4ヵ所と豊富なタイアウトループ

張り方のバリエーションを出す意味で、タイアウトループもたくさん用意されています。
Swing Tarpの表側には、四隅と各辺中央だけでなく、タープ表面にも4ヵ所、計12ヵ所のタイアウトループが付いている。さらに、タープ表面の4ヵ所ループの裏側にもループを設けています。

内側のタイアウトループ。バグネットを吊るすのに最適。


よく言われるタープへの不安として「虫除けはどうするの?」というものがありますが、Swing Tarpでは内側のタイアウトループにバグネットを吊るせばいいわけです。
ぶら下げるところがあるだけで、シェルターとしての機能性が全然違ってくると思います。通常のタープは周りにしかタイアウトが付いていません。それをこういう風に各所につけることで、いろんなバリエーションが取れる。サイドリフターみたいに壁面を引っ張ることもできる。

独創的で造形的に美しいMOSS TENTのようなタープもいいと思うけれども、Swing Tarpは、シンプルなんだけれども、使い方のバリエーションがたくさんあります、という道具としてデザインされているんです。

日本のガレージメーカーがMade in Japanで物を作るために

ガレージメーカーが物作りを続けていくためには、日本国内で小ロットで生産できることが望ましいのではないでしょうか。でも、現実問題として日本の縫製業の状況は決していいとは言えません。いま、日本で縫製業の職人さんの多くは60代以上の方です。職人の新規参入も少ない。様々な問題があると伺っています。そんな状況で、国内の工場で作ろうと思っても、ある程度の数をまとめないしないと作れないんです。職人さんたちも縫製の技術は持っていても、新しい素材に慣れたり、使ったことのない製品を縫うことを覚えないといけない。新たな仕事を職人さんにしてもらうには、ある程度数がないと頼めないですよね。

FREELIGHTさんだけでなく、国内のガレージメーカーはいい工場をずっと探し続けています。工場探しの苦労はどのガレージメーカーさんからもお聞きしています。かくゆうわたし自身同様です。そんな事情を考えたときに、うちはうちの考えがあるのでうちだけで作りますというだけじゃ、なかなか現状を変えられないなと感じたんです。たとえば、うちで10個作るの断られて、FREELIGHTさんで10個作るの断られるならば、同じものを20個発注するから、この素材で製品を作ってくださいって言った方がまだ可能性がでてきますよね。

日本にはバックパックやテントに特化した縫製工場が幾つもあるわけではありません。それなら作ることができる環境をすこしずつ自分たちで作っていく取り組みが不可欠です。それでも多くの職人さんが引退するであろう、5年後、10年後はどうなるかわかりません。
FREELIGHTさんから、一緒にやりませんかっていう提案から、一緒に作れるタープを模索していくことになったのはそういった経緯があるのです。

日本のガレージメーカーが、日本で物を作りつづけるために。そのことに対するひとつのアプローチ。そういう意味合いも含まれたタープなのです。

製品名
Swing Tarp
メーカー
FREELIGHT / Highland Designs
価格
¥18,900
購入
Hiker’s Depot / FREELIGHT

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